以前から、いろんな映画に出てくるコンピュータをまとめたサイトがないか探していたのだが *1、とりあえずインタフェースに関しては、まとめられた講義資料を見つけたので、頑張って読んでみた。
論文やカンファレンスでの発表資料もある。
- Michael Schmitz, Christoph Endres and Andreas Butz: "A Survey of Human-Computer Interaction Design in Science Fiction Movies", in Proceedings of the 2nd International Conference on INtelligent TEchnologies for interactive enterTAINment (Intetain 2008)
講義資料を映画作品中におけるインタフェースの役割を示している部分を中心にまとめてみる。以下、注意事項。
- 関連研究の紹介など、あんまり興味がない部分はスルーしているので、気になる人は原文を読んだ方が良いでしょう。
- 論文の方が新しいため、気になる人は論文を読んだ方が良いでしょう。
- 観たことがない映画については説明が誤っている可能性がある。
- そもそも英文読解力に問題がある。w
はじめに
SF 映画における背景などの設定には現代よりも進んだ技術が出てきたりするが、ほとんどの映画では製作者が現代の延長線上に想像できる未来のものでしかない。この資料ではインタフェースに焦点を合わせていく。
(後は研究の紹介とこの資料の構成についての説明。)
映画での対話のデザインに影響を与える要因
近年は特殊効果技術が発達したことでむしろ CG を使っていないシーンがないような映画 (例:Star Wars Episode II) も現れてきている。その上、興行的に成功する映画が増えてきたことでより多くの予算をかけられるようにもなった。
また、研究や製品の流行は映画に影響を与え、製作者のアイデアをより刺激した。
(スライドの 4 頁目に Technology と Firms が互いに互いをインスパイアする図がある。ここではおそらくそれが言いたいのだと思う。)
対話の概念がない映画
以降の 4 作品のうち、最初の 3 つはまだ対話の概念がない時代の映画。
最後のひとつは対話に関する概念を現代に合わせている映画。
Metropolis
作業員が円周上に配置されたレバーをライトが点灯する度に操作する。
人間が操作することを考慮していない設計であるため、機械を操作するためには作業員があくせく動かなければならないという、コンセプトレベルでの欠陥がある。
Raumschiff Orion
宇宙船の操縦に
- レバーとして設置された蛇口
- 平鉄
を使用する。
また、左手にパンチカードを持ち、右手で小さなキーボードをタイプするシーンもある。
対話の概念がある映画
神経学技術 (Neuro technology)
この分野ではこの技術に関しては関心がなく、現実的でないと考えられている。*3
Johnny Mnemonic
脳を (HDD みたいな) データの記憶媒体として利用する。
耳の下のソケットに端子を接続し、有線でデータを転送する。
また、転送作業にはヘッドマウントディスプレイを装着する。
The Matrix
後頭部のソケットを通じて、物理的に脳にアクセスする。
キアヌ・リーブスは Johnny Mnemonic に引き続き、脳をコンピュータにつなぐ人の役を演じていることも言及されてるが、これは自分としても興味深かったりする。
認証 (Identification)
映画では伏線に利用されたりする。
Gattaca
血液に含まれる DNA を解析することでそれを身分証明に利用する。
DNA 解析による認証は 1985 年から実際に犯罪対策に利用されている。
また、その DB は既に世界各国で導入されており、そのコストの低下や解析速度の向上により、現実的に運営可能なものとなっている。(よって、遠い未来の話ではない。)
ディスプレイ
映画におけるディスプレイの活用は新しい技術であることを簡単に伝えることができるため、製作者にとっては都合の良いアイテムであると言える。
Total Recall
壁一面のディスプレイで TV や風景を映すことができる。
Star Trek: The Next Generation
3 種類のアイテムが登場する。
- トリコーダー
- PDA のような小型機器で多くのセンサを持ち、船外での活動に使用する。
- 船内のデッキや病室で使われるタブレット PC
- とても薄く、紙のような形状を持つ。
- ウォールスクリーン
- 船内のいたるところにあり、多人数でデータを共有できる。
ドクターがライトペンで持っているタブレットからウォールスクリーンにデータを転送するシーンがある。
X-Men
物理的に 3D 情報を表示するディスプレイがブリーフィングで利用されている。
作品中での説明はないが、このディスプレイは対象を表現するために上下する小さな金属の立方体でできているように見える。
Forbidden Planet
3D 画像を表示する thought analyzer と呼ばれる機器が登場する。
音声
音声認識および合成はロボットものの映画では新旧問わず出てくる技術である。
音声の利点は直感的に命令することや情報を受け取ることができることである。
映画では、特殊効果は必要なく、役者にコンピュータと対話する演技をしてもらえばいいだけであるため、その演出は容易である。
ほとんどの映画では音声インタフェースは会話であるが、その難易度に関しては考慮されていない。
Dark Star
(原文を読んでもよくわかりませんでした。すみません。)
Time Machine
図書館内のいろんな場所にある、透明で成人男性くらいの大きさのディスプレイに AI が表示される。
その他の入出力機構
Johnny Mnemonic
ヘッドマウントディスプレイとデータを掴むためのグローブが登場する。
ほとんどの対話は説明が不要で、特別な才能も必要ない。
例えば、「本を開く」というジェスチャーで対話を開始することができる。
コンピュータ内でのアニメーションをコントロールするためにジェスチャー認識を利用するシーンもある。
ここでは緑色の強い光のグリッドがプロジェクタの画像補正を連想させる。
Total Recall
主人公の女性がテニスのサーブを正しい動きをする立体投影と一緒に練習するような、高度な運動追跡機構が登場する。
彼女はトレーナーの動きを参考にしたり、会話によるフィードバックで動きを確認したりしている。
実際にはヘッドマウントディスプレイなしで空中に 3D 画像を投影することはうまくいかず、このアイデアの実現は難しい。
一方で運動追跡は 6 自由度のセンサーを装着し、カメラがあれば可能である。
The Hitchhiker's Guide to Galaxy
Babel-fish translator という耳に入れるだけであらゆる言語を翻訳する機器が登場する。これは直感的でわかりやすい。
The Matrix
(原文を読んでもよくわかりませんでした。すみません。)
ピルの選択は物理的なインタフェースによる選択のメタファーになっている?
固定電話がマトリックスの出入り口になることや、携帯電話でマトリックスの外との通信を行うことは観客に対して、さらなる説明をすることなく、二つの世界をまたいでいることを明確にすることができる。
Minority Report
この映画を製作するためにプロダクションデザイナーの Alex McDowell は MIT のメディアラボを訪ね、各分野のエキスパートらと舞台となる未来について話し合った。
(Tangible UI の話はよくわかりませんでした。すみません。)
未来の買い物については作品中で個人をターゲットにした広告で示されている。
トム・クルーズが地下鉄に入ると、数々のコマーシャルが彼の名前を呼んで、彼を迎え、彼の注意を引こうとする。
他のシーンでは彼が衣料品店に入ると、AI が彼を認識し、彼が以前に購入した服に満足しているか尋ねてくる。
彼の購入履歴は保存され、好みそうな服を薦めるのに使用されている。
このように個人をターゲットにした商品の案内は既にいくつかのウェブサイトに存在する。(例:amazon)
実際にそのようなサイトでは、同じ商品を購入した顧客の購入履歴から類似の商品を提案し、薦めてくる。
このようなサイトでの認証はクッキーを使えば、簡単であるし、実生活での認証には顧客 ID を使う。
透明なスクリーンとジェスチャーを認識するインタフェースも登場する。
作品中ではプリコグの記憶や映像を閲覧するのに利用する。
利用者は 6 自由度を実現するために指先に 3 つの反射素子のついたグローブをつける。
これはスクリーンのデータとその配置を操作するためにデザインされたジェスチャーのメタファーとして使われている。
(ジェスチャーの解説以降はあんまり興味がなかったのでスルーしてます。すみません。)
また、記事の変わる新聞やアニメーションするコーンフレークの箱も登場する。
これらと現代の比較可能な技術としては電子書籍がある。
風刺的な場面
Galaxy Quest
(原文を読んでもよくわかりませんでした。すみません。)
宇宙船を操縦するふりをする?
Futurama
別の場所での会話に出てくる Fry という人の名前に反応して
- Fry 氏に関連した動画をダウンロードする
- カレンダーの金曜日を表示する
- フレンチフライを注文する
などの誤動作をする。
まとめ
マイノリティレポートの説明が多いのはこの作品が広範囲の調査を元に綿密な準備がされていたためである。
一方、他の映画では既に存在する技術に合わせたインタフェースが多い。
これはインタフェースの研究自体の歴史がまだ浅いことと、インタフェースは人に近過ぎるが故に逆に目立たないため、見栄えの良いハイテクを使用した方が映画としては望ましいためであると考えられる。
また、古い映画はその頃の技術的な流行に影響されていることがある。
加えて、近年の映画は予算や特殊効果技術の向上という変化がある。
多くの映画では会話によるインタフェースとヘッドマウントディスプレイなしの 3D 表示を使用する傾向が見られた。
いずれも製作者にとっては簡単でかつ現在の技術の延長線上にある。
認証についてはしばしば議論されるが、インタフェースよりも社会学的な観点からによるものが大きい。